精神障害がある人にとって、キャリアをどう考えていけばいいのか。これは、僕自身が精神障害者になってから何度も考えてきたテーマです。
一般的なキャリア論では、「年収を上げる」「昇進する」「資格を取る」「転職してキャリアアップする」といった考え方が中心になります。もちろん、それらもキャリア形成の大切な要素です。
しかし、精神障害者の場合、それだけでは十分ではないと思っています。なぜなら、精神障害がある場合には、「どれだけ働けるか」だけではなく、「その働き方をどれだけ長く続けられるか」が非常に重要だからです。
僕自身、以前は一般雇用で働いていました。現在はレジャー施設で障害者雇用として働いています。その経験から、精神障害者のキャリアでは「無理をして上を目指すこと」だけが正解ではないと考えるようになりました。
この記事では、僕自身の経験をもとに、精神障害者のキャリアについて考えてみたいと思います。
精神障害者のキャリアでは「続けられる仕事」が重要
キャリアを考えるとき、多くの人は「自分には何ができるか」を考えると思います。
もちろん、それは重要です。しかし精神障害者の場合、それと同じくらい、
「自分は何なら無理なく続けられるのか」
を考えることが大切だと思います。
僕自身、以前は一般雇用で工場の仕事をしていました。現在よりも給料は高く、仕事そのものにもやりがいを感じていました。しかし、仕事の負荷が大きくなったことで体調を崩しました。この経験から学んだのは、「仕事ができること」と「仕事を続けられること」は違うということです。
例えば、残業が多い仕事でも問題なく働ける人がいます。
人と接することが好きで、接客の仕事を楽しめる人もいます。
変化の多い環境でも、それほどストレスを感じない人もいます。
一方で、それらが大きな負担になる人もいます。
だからといって、その人が「仕事ができない」というわけではありません。自分の特性と仕事の環境が合っていないだけかもしれません。
僕自身、現在はレジャー施設で障害者雇用として働いています。最初は接客の仕事を担当していました。しかし、僕にとって接客はかなりプレッシャーが大きい仕事でした。そこで職場に相談し、現在は環境整備を中心とした仕事をしています。
もちろん、現在の仕事でも忙しい時期には接客することがあります。実際、繁忙期にはかなり忙しくなることもあります。それでも、自分の特性に合わせて仕事を調整してもらえることで、以前よりも働き続けやすくなりました。
ここで大切なのは、「楽な仕事を選ぶ」ということではありません。自分が長期間働き続けられる環境を考えることも、立派なキャリア戦略です。
障害者雇用はキャリアの選択肢の一つ
精神障害者のキャリアを考えるとき、障害者雇用も重要な選択肢になります。
障害者雇用にはメリットだけでなく、デメリットもあります。一般雇用と比べて給与水準が低い場合がありますし、仕事内容や昇進の機会が限られることもあります。
僕自身、現在の収入は以前の一般雇用の仕事よりも低くなっています。そのため、「給料をもっと上げたい」という気持ちが全くないわけではありません。
一方で、障害者雇用だからこそ得られているものもあります。
僕の場合、合理的配慮を受けながら働くことができています。残業もほとんどありません。体調が悪いときには、休みや早退について相談できます。職場との定期的な面談もあります。こうした環境があることで、仕事を続けるためのハードルが下がっています。
だから僕は、障害者雇用を「妥協した働き方」とだけ考える必要はないと思っています。自分の障害特性を理解したうえで、必要な配慮を受けながら働く。これは一つの合理的なキャリア選択です。
キャリアというと「上を目指すこと」が強調されがちですが、長い人生では「安定して働き続けること」にも大きな意味があります。
無理をして体調を崩し、仕事を長期間離れるよりも、自分に合った環境で働き続ける。そういうキャリアの作り方があってもいいと思います。
キャリアは「仕事」だけで考えなくていい
僕が精神障害者のキャリアについて考えるようになって、特に重要だと思うようになったのが、「仕事だけでキャリアを考えない」ということです。
会社でどれだけ出世するか。
年収がいくらになるか。
どんな肩書きを持つか。
こうしたことはもちろん重要です。
しかし、それだけが人生ではありません。
仕事をしながら勉強する。
趣味を持つ。
文章を書く。
資産形成をする。
福祉制度について学ぶ。
こうしたことも、長い目で見れば人生の土台になります。
僕自身、精神障害者になってから社会保障制度について勉強するようになりました。障害年金や自立支援医療、障害者控除など、自分に関係する制度について調べていくと、「知らないことによる差は意外と大きい」と感じます。
利用できる制度を知ることは、単に福祉の知識を増やすだけではありません。生活を安定させることにもつながります。
そして生活が安定すれば、仕事や将来について考える余裕も生まれます。
精神障害者のキャリアを考えるなら、「どうやって年収を上げるか」だけでなく、「どうやって生活全体を安定させるか」という視点も重要だと思います。
今の仕事と将来やりたいことは別でもいい
現在の仕事が、そのまま将来の仕事になるとは限りません。これは精神障害者に限らない話ですが、特に精神障害者の場合は意識しておいてもいいと思います。
僕は現在、レジャー施設で働いています。しかし、将来的にやりたいことは別にあります。現在は仕事をしながら福祉について勉強しています。将来的には大学院への進学や、福祉に関する研究も考えています。つまり、現在の仕事を生活の土台にしながら、その外側で将来の可能性を作っているわけです。
これは精神障害者にとって、一つの現実的なキャリア形成の方法ではないでしょうか。いきなり仕事を辞めて、新しいことを始める必要はありません。
今の仕事を続けながら、少しずつ勉強する。
興味のある本を読む。
資格を取得する。
文章を書く。
大学で学ぶ。
そうやって将来につながるものを少しずつ作っていく。時間はかかりますが、無理の少ない方法だと思います。
精神障害者だからこそ持っている経験を活かす
精神障害になったことで、以前できていたことができなくなった。働き方を変えざるを得なくなった。そうした経験を持っている人も多いと思います。
僕自身もそうでした。ただ、その経験をすべてマイナスとして考える必要もないのではないかと思っています。
例えば、僕は障害者雇用で働いています。
就労支援も利用しました。
障害年金の申請も経験しました。
福祉制度についても勉強しています。
こうした経験は、精神障害を経験していなければ得られなかったものです。もちろん、個人の経験だけで社会全体を判断することはできません。しかし、当事者としての経験に加えて、福祉や社会制度について勉強していけば、そこから自分なりの専門性を作ることはできます。
僕の場合は、それをnoteやブログで発信しています。自分の経験を文章にすることで、過去の出来事が単なる「経験」で終わらず、知識として整理されていきます。そして、記事を書くために調べることで、さらに新しい知識を得ることができます。
この循環を続けていくことも、僕にとってはキャリア形成の一部です。
専門性は少しずつ作っていけばいい
「キャリアアップしなければ」と考えると、何か特別な資格を取らなければいけないように感じるかもしれません。もちろん資格が役立つ場面はあります。ただ、専門性は資格だけで決まるものではありません。
例えば、障害者雇用について継続的に勉強する。
精神障害者のお金について調べる。
就労支援について学ぶ。
福祉制度について研究する。
自分の経験を文章にする。
こうした積み重ねでも、少しずつ専門性は生まれていきます。
僕自身、福祉について学びながら、精神障害者の働き方やお金について発信しています。まだまだ勉強中ですが、これからも知識を増やしていけば、自分なりの専門領域を作っていけるのではないかと思っています。
精神障害者だからキャリアの可能性が狭い。
そう考えるだけではなく、
「自分の経験をどう専門性に変えていくか」
と考えてみるのも一つの方法だと思います。
仕事だけを人生の中心にしない
精神障害者にとって、仕事以外の世界を持つことも重要だと思います。会社が自分の居場所のすべてになると、仕事で何か問題が起きたときに精神的なダメージが大きくなります。
だからこそ、仕事とは別に自分の世界を持っておく。僕の場合、それが勉強だったり、読書だったり、文章を書くことだったり、投資だったりします。
仕事がうまくいかない日でも、「自分には仕事以外にもやることがある」と思えると、少し気持ちが楽になることがあります。
これは仕事を軽視するという意味ではありません。むしろ、仕事だけに人生を依存しないからこそ、仕事と適度な距離を取ることができます。
会社からの評価だけで自分の価値を決めない。
給料だけで自分の価値を決めない。
仕事以外にも、自分が大切にできるものを持つ。
これもキャリアを長く続けていくためには重要なことだと思います。
「キャリアアップ」の意味を広げてみる
一般的なキャリアアップという言葉には、「昇進」「昇給」「転職」といったイメージがあります。しかし、精神障害者の場合は、もう少し広く考えてもいいのではないでしょうか。
以前は仕事を続けられなかった人が、安定して働けるようになる。
自分の障害特性を理解して、自分に合う仕事を選べるようになる。
必要なときに支援を求められるようになる。
仕事をしながら勉強できるようになる。
自分でお金を管理できるようになる。
こうした変化も、十分に人生の前進です。
年収が上がらなければ「成長していない」と考えてしまうと、自分が積み重ねてきたものを見落としてしまいます。精神障害者の場合、安定して働けるようになること自体が、大きな意味を持つこともあります。その安定を土台にして、次のステップを考えていけばいいのです。
精神障害者のキャリアは「安定」と「挑戦」の両立
ここまで書いてきたことをまとめると、僕は精神障害者のキャリアでは「安定」と「挑戦」の両方が大切だと思っています。まずは、無理なく働き続けられる環境を作る。そのうえで、仕事以外の時間を使って少しずつ新しいことを学ぶ。
僕自身も、現在の仕事を続けながら福祉について学んでいます。すぐに何か大きな結果を出そうとは考えていません。今の生活を安定させながら、将来につながることを少しずつ積み上げていく。僕にとっては、そのくらいのペースがちょうどいいのだと思っています。
キャリア形成というと、大きな決断をイメージするかもしれません。しかし、毎日少しずつ勉強することもキャリア形成です。
本を一冊読むこともキャリア形成です。
仕事を一年続けることもキャリア形成です。
自分に合わない仕事について考え直すこともキャリア形成です。そう考えると、キャリアというものは、もっと身近なものなのかもしれません。
まとめ:自分に合ったキャリアを作っていく
精神障害者のキャリアを考えるとき、「一般的な成功」に無理やり自分を合わせる必要はないと思います。
年収を上げることもキャリアです。
転職することもキャリアです。
資格を取ることもキャリアです。
一方で、安定して働き続けることもキャリアです。
必要な支援を受けることもキャリアです。
仕事をしながら勉強することもキャリアです。
仕事以外の居場所を作ることもキャリアです。
大切なのは、他人が考える「立派なキャリア」ではなく、自分が長く続けられる人生をどう作っていくかなのではないでしょうか。
僕自身も、まだキャリアの途中です。現在は障害者雇用で働きながら、福祉について勉強しています。そして、文章を書きながら、自分の経験を整理しています。
将来的には大学院で研究することも考えています。
すぐに大きく変わるわけではありません。
それでも、現在の生活を安定させながら、少しずつ次の可能性を作っていく。それが僕にとっての「精神障害者のキャリア戦略」です。
精神障害があるからといって、キャリアを諦める必要はありません。ただし、無理をして「普通のキャリア」に合わせる必要もありません。自分の体調、自分の特性、自分の生活、そして自分がやりたいこと。
それらを考えながら、自分なりのキャリアを少しずつ作っていけばいいのだと思います。



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