「働きたいけれど、いきなり就職するのはちょっと不安」
「精神障害があるけれど、一般企業で働けるのだろうか」
そんな人に知っておいてほしい制度の一つが、就労移行支援です。
僕自身、精神障害者になってから就労移行支援を利用しました。最終的には就労移行支援を経由して現在の仕事に就職することができました。
実際に利用してみると、「これはありがたいな」と思うところもあれば、「もう少しこうだったらいいのに」と思うところもありました。
今回は、就労移行支援とは何なのか、そして実際に使ってみて感じたメリット・デメリットについて、僕の経験をもとに書いてみます。
就労移行支援とは?
就労移行支援は、障害のある人が一般企業などへの就職を目指すために利用できる福祉サービスです。
仕事を探すだけではなく、就職に必要な訓練を受けたり、履歴書や職務経歴書を作成したり、面接の練習をしたり、就職活動について相談したりできます。
事業所によって内容は違いますが、パソコンの訓練、ビジネスマナー、コミュニケーション、SST(ソーシャルスキルトレーニング)などを行っているところもあります。
僕の場合も、パソコンの資格取得やビジネスマナー、コミュニケーション、履歴書の作成など、就職に向けた準備をいろいろと行いました。
就労移行支援の大きな特徴は、「すぐに就職する」のではなく、就職するための準備期間を作れることだと思います。
精神障害などがあり、いきなり仕事を始めることに不安がある人にとっては、この「準備期間」がかなり重要になります。
実際に使ってみて感じたメリット
一人で就活しなくていい
個人的に一番大きかったメリットは、これです。
一人で就職活動をしていると、何か分からないことがあったときに、全部自分で調べなければなりません。
「この求人に応募して大丈夫なのか」
「障害について会社にどう伝えればいいのか」
「面接では何を話せばいいのか」
など、考えることはかなりあります。就労移行支援を利用していると、こうしたことをスタッフに相談できます。履歴書を書いたときも見てもらえますし、面接について相談することもできます。
もちろん最終的に就職活動をするのは自分ですが、一人で全部抱え込まなくていいというのは精神的にかなり楽でした。
次の就活に向けて考える時間ができる
精神障害を経験した後に仕事を探す場合、「どんな仕事でもいいから早く就職しよう」と考えてしまうことがあります。
しかし、自分に合わない仕事に就いてしまうと、長く続けることが難しくなる可能性があります。僕自身、以前の仕事では仕事上のストレスがかなり大きくなり、体調を崩した経験があります。
そのため、次に仕事を探すときには「給料が高いか」だけではなく、「自分が継続して働ける仕事なのか」ということを考える必要がありました。
就労移行支援を利用すると、訓練を受けながら、自分の働き方について考える時間を作れます。
これは意外と大きなメリットだと思います。
就職活動の準備をしてから動ける
履歴書や職務経歴書、面接など、就職活動には準備が必要です。特にブランクがあったり、以前の仕事を辞めてから時間が経っていたりすると、「何を書けばいいんだろう」と悩むこともあります。
就労移行支援では、こうした就職活動の準備をスタッフと一緒に進められます。面接練習などもできるので、「いきなり本番」という状態を避けることができます。
利用料が比較的安い
就労移行支援は障害福祉サービスなので、利用には原則として自己負担があります。ただし、所得などによって月額の自己負担上限が設定されているため、利用者の多くは無料で利用しています。
僕の場合も、就労移行支援は大きな金銭的負担なく利用することができました。自己負担が発生する場合でも、所得区分によって上限額が決められています。例えば、区分によっては月額9,300円などの負担上限があります。
そのため、「就職のための訓練に何十万円も払わなければならない」というような制度ではありません。
利用を考えている人は、自分の場合にどの程度の自己負担になるのか、市区町村の窓口や事業所に確認してみるといいでしょう。
就職後につながる支援もある
就労移行支援のメリットは、就職したら完全に終わりというわけではないところにもあります。就職後には、就労定着支援など、仕事を続けるための支援につながることもあります。
僕自身も就職後に就労定着支援を利用しました。職場で困ったことがあったときに相談できる場所があるというのは、精神障害者として働くうえで安心材料になります。
実際に使ってみて感じたデメリット
もちろん、就労移行支援にはデメリットもあります。
基礎的な訓練が多い
これは事業所によると思いますが、僕が利用したところでは、パソコン、ビジネスマナー、コミュニケーションなど、比較的基礎的な訓練が多いと感じました。
すでに社会人経験が長い人や、ある程度のスキルを持っている人からすると、「これはもう知っている」という内容もあると思います。僕自身も、社会人経験があったので、「もう少し専門的なことを勉強したかった」と感じる部分はありました。
例えばIT系の仕事を目指すのであれば、プログラミングなどを専門的に学べる事業所を選ぶなど、自分の目標に合った事業所を探すことが重要だと思います。
「就労移行支援ならどこでも同じ」と考えないほうがいいでしょう。
就職するまでに時間がかかる
就労移行支援は、基本的に「すぐ就職するためのサービス」ではありません。訓練を受け、自分の体調や働き方について考え、就職活動をしていくため、どうしても時間がかかります。早く働きたい人にとっては、これがデメリットになる可能性があります。
一方で、精神障害があり、過去に仕事が長続きしなかった人にとっては、この時間が無駄とは限りません。僕の場合も、就職を急ぐより、次の仕事を長く続けられるように準備する時間として考えていました。
事業所によって質に差がある
これもかなり重要だと思います。
就労移行支援と一言で言っても、事業所によって訓練内容やスタッフ、就職先の傾向などは違います。
「パソコンスキルを伸ばしたい」という人と、「まずは生活リズムを整えたい」という人では、合う事業所も変わってきます。
そのため、最初から一つの事業所に決めるのではなく、見学や体験利用をしてから決めることをおすすめします。
通所そのものが負担になることもある
精神障害がある場合、毎日決まった時間に通所すること自体が負担になることもあります。「仕事をするための訓練なのだから、毎日通えるようにならなければ」と無理をしてしまうと、本末転倒です。
自分の体調に合わせて、どの程度の頻度から始めるのかをスタッフと相談することも大切だと思います。
就労移行支援は「就職するための学校」のようなもの
僕は、就労移行支援を一言で表すなら、「就職するための学校のような場所」だと思っています。もちろん学校とは違って福祉サービスですが、通所して訓練を受けながら、就職に向けて準備を進めていくという意味では似ています。
ただし、就労移行支援に通えば自動的に就職できるわけではありません。
どんな仕事をしたいのか、自分には何ができるのか、どんな配慮が必要なのか。そういったことを考えながら、自分自身でも就職に向けて動いていく必要があります。
だからこそ、事業所選びは大切です。
「とりあえず近いから」という理由だけで決めるのではなく、自分が目指している仕事に合った訓練を受けられるか、スタッフに相談しやすいかなどを確認したほうがいいでしょう。
実際に利用してみて思うこと
僕は就労移行支援を利用して、結果的にはよかったと思っています。特に大きかったのは、一人で就職活動をしなくてよかったことです。
精神障害を抱えながら就職活動をするのは、それなりにエネルギーを使います。そんなときに相談できるスタッフがいるだけでも、かなり違います。
一方で、「もっと専門的な訓練を受けたかった」という不満もありました。
そのため、これから就労移行支援を利用する人には、「就労移行支援に通うこと」そのものを目的にするのではなく、その先にどんな仕事をしたいのかを考えて事業所を選んでほしいと思います。
就職を急がなくてもいい。
一人で頑張らなくてもいい。
必要な支援を受けながら、自分に合った働き方を探していけばいい。
就労移行支援は、そんなふうに次の仕事を考えるための「準備期間」を作ってくれる制度だと思います。



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