障害者雇用で働いている人の中には、
「仕事は何とか続けているけど、職場に相談しにくいことがある」
「会社に直接言うほどではないけど、ちょっと困っている」
「仕事について誰かに定期的に相談できたらいいのに」
と思っている人もいるのではないでしょうか。僕自身、障害者雇用で働き始めてから、こうした場面が何度かありました。そんなときに利用しているのが「就労定着支援」です。
正直に言うと、利用する前は「そこまで必要なのかな」と思っていました。
就職したのだから、あとは自分で仕事を続けていけばいい。
そんなふうに考えていたからです。
しかし、実際に利用してみると、これが意外に役立ちます。
特に僕が助かっているのは、職場に直接言いにくいことを間に入って伝えてもらえることと、定期的に面談をして相談に乗ってもらえることです。
さらに僕の場合、就職前に利用していた就労移行支援の事業所に、そのまま就労定着支援もお願いできています。これも非常にありがたいことでした。
今回は、僕が実際に利用している就労定着支援について、「そもそもどんな制度なのか」「就労移行支援との違い」「同じ事業所にそのままお願いできたこと」「実際に利用してみてどうだったのか」という順番で書いてみたいと思います。
就労定着支援とは?
まず、就労定着支援について簡単に説明します。
就労定着支援は、障害のある人が一般企業などで働き続けられるようにサポートする障害福祉サービスです。
就職するまでを支援する「就労移行支援」に対して、就職した後の「働き続けること」を支援するのが就労定着支援、と考えると分かりやすいと思います。
厚生労働省の資料でも、就労定着支援は、就労に伴って生じる生活面などの課題について相談に乗ったり、企業や関係機関との連絡調整を行ったりするサービスとされています。
つまり、単純に「仕事の愚痴を聞いてもらうサービス」ではありません。もちろん相談には乗ってもらえますが、それだけではなく、必要に応じて本人と職場との間に入って調整してくれる。言ってみれば、働く本人と職場の間をつないでくれる存在でもあるわけです。
就職した後というのは、意外といろいろな問題が出てきます。仕事内容そのものが難しい場合もありますし、職場の人間関係、仕事量、勤務時間、体調管理など、働き始めてから初めて分かることもあります。
精神障害の場合、体調やストレスによって仕事への負担感が変わることもあります。
「今日はちょっとしんどいな」
「この仕事量は自分には少しきついな」
「職場にこうしてほしいけど、直接言うのは難しいな」
ということもあるでしょう。
そういうときに相談できるのが、就労定着支援です。
就労移行支援から、そのまま就労定着支援へ
僕の場合、就労定着支援を利用するうえで、とてもありがたかったことがあります。それは、就労移行支援で利用していた事業所に、そのまま就労定着支援をお願いできたことです。
僕は就職する前に、就労移行支援を利用していました。そこで就職に向けた訓練を受けたり、仕事について相談したりしながら、就職活動を進めていきました。そして実際に就職することができました。
普通なら、就職したところで「就労移行支援は終了」というイメージがあるかもしれません。もちろん就労移行支援そのものは就職までの支援が中心です。しかし、僕が利用していた事業所では、就職後の就労定着支援もお願いすることができました。
そのため、就職したからといって、支援者との関係が突然ゼロになるわけではありませんでした。これは精神的にかなり安心できました。
就職したばかりの時期というのは、仕事を覚えるだけでも大変です。そこに「新しい支援機関を探して、最初から自分のことを説明する」という負担まで加わると、結構大変だと思います。
僕の場合は、それまで就労移行支援で相談していた事業所に、そのまま就労定着支援をお願いできました。これまでの経緯をある程度知ってくれている人たちなので、僕としても話がしやすかったです。
もちろん、すべてのケースで同じ事業所が就労定着支援を提供できるとは限りません。利用できる事業所や制度上の要件などがありますので、実際に利用する際には自治体や事業所への確認が必要です。
それでも、僕自身の経験としては、就労移行支援から就労定着支援へ、そのまま支援をつないでもらえたことは大きなメリットでした。
一から自分のことを説明しなくていい
同じ事業所にお願いできて良かったと思う理由は、もう一つあります。それは、自分のことを一から説明しなくてもいいということです。
精神障害がある人にとって、自分の状態や苦手なこと、これまでの経緯を誰かに説明するのは、意外とエネルギーを使います。
「こういうことが苦手です」
「こういう状況になるとしんどくなります」
「以前こういうことがありました」
といったことを、初対面の人に最初から説明するのは簡単ではありません。
就労移行支援の段階から相談していた事業所であれば、これまでの経緯をある程度分かってくれています。
もちろん、就職後の状況については改めて説明する必要があります。それでも、「自分がどういう人間なのか」「どんな仕事をしてきたのか」「就職に至るまでどういう支援を受けてきたのか」といった基本的な部分を、ゼロから説明しなくていい。
これはかなり楽でした。
僕の場合は、就労移行支援から就職、そして就労定着支援という流れがつながっている感覚があります。
「就職したから支援が終わる」というより、
「就職したので、支援の形が変わった」
という感じです。この感覚は、個人的にはかなり良かったと思っています。
一番助かっているのは「職場に言いにくいこと」を伝えてもらえること
僕が就労定着支援を利用していて、一番助かっていると感じるのが、
職場に直接言いにくいことを伝えてもらえること
です。
会社で働いていると、「ちょっと困っているけど、自分からは言いにくい」ということがあります。
例えば、仕事の内容について相談したい。
仕事の量について相談したい。
体調面について配慮してほしい。
勤務の仕方について少し調整してほしい。
こういうことを、上司に直接言える人もいるでしょう。しかし、誰もがそうできるわけではありません。
特に精神障害がある場合、職場で「自分はこれが苦手です」「この仕事は負担が大きいです」と伝えること自体に、かなりエネルギーを使うことがあります。
「こんなことを言ったら、仕事ができないと思われるのではないか」
「迷惑な人だと思われないだろうか」
「わがままだと思われないだろうか」
そんなことを考えてしまうこともあります。
僕も、職場に何かを伝えるときに、いろいろと考えてしまいます。
そこで、就労定着支援の担当者に相談します。すると、自分一人で抱え込まずに済みます。
必要であれば、支援員さんから職場側に話をしてもらうこともできます。
これが本当にありがたい。
もちろん、何でもかんでも支援員さんに伝えてもらえばいい、という話ではありません。自分で伝えられることは、自分で伝えたほうがいいでしょう。
ただ、「これはちょっと自分から言うのは難しいな」という問題について、間に入ってくれる人がいる。それだけでも精神的な負担はかなり違います。
定期的に面談で相談できる
就労定着支援では、定期的に面談をしてもらえます。僕の場合も、定期的に面談があります。この定期的な面談が、地味にありがたいです。何か大きな問題が起きてから相談する必要がないからです。
「最近どうですか?」
というところから話を始められます。
そこで、
「今のところ大丈夫です」
ということもあります。
逆に、
「最近ちょっと仕事がきついです」
という話になることもあります。
特に精神障害の場合、問題が大きくなってから相談すると、本人もかなり疲れてしまいます。
まだ小さい段階で、
「最近ちょっと気になることがある」
と相談できるほうがいい。僕はこの点が就労定着支援の良いところだと思っています。
定期的に面談があることで、
「何かあったら相談できる」ではなく、「何もなくても定期的に状況を確認してもらえる」
からです。
これは安心感につながります。
「相談できる第三者」がいる安心感
就労定着支援のもう一つの良さは、職場でも家族でもない第三者に相談できることです。
会社の人に相談すると、当然ながら「職場の人間関係」という側面が入ってきます。
家族に相談すれば、家族だからこその心配や意見もあるでしょう。
それが悪いわけではありません。
ただ、仕事について客観的に相談できる第三者がいると、かなり楽です。
例えば、
「最近、仕事がちょっとしんどい」
「この働き方を続けていけるだろうか」
「職場にはどう伝えたらいいだろう」
といった話をします。そうすると、自分の中でモヤモヤしていたものが整理されていきます。
実は、相談することで問題そのものが解決するわけではない場合もあります。
それでも、
「今、自分は何に困っているのか」
「何を職場に伝えればいいのか」
「これは自分で対応する問題なのか、それとも支援者に相談したほうがいいのか」
が整理されるだけでも、かなり違います。僕にとっては、この「相談できる場所がある」ということ自体が大きな意味を持っています。
利用料は僕の場合月4,000円ほど
障害福祉サービスというと、
「利用料が高いのでは?」
と思う人もいるかもしれません。
障害福祉サービスには所得などに応じた利用者負担の仕組みがあり、負担には月額上限も設定されています。実際の負担額は所得区分などによって変わります。
僕の場合は、現在、月4,000円ほどで就労定着支援を利用しています。もちろん、これは僕自身のケースです。誰でも月4,000円で利用できるという意味ではありません。利用者負担は所得などによって異なるので、利用を検討する場合は自治体や事業所に確認するのがいいでしょう。
僕自身は、月4,000円程度でこの支援を受けられるのであれば、かなりありがたいと思っています。
月4,000円を1年間で考えれば約48,000円です。決して小さな金額ではありません。ただ、仕事を続けるための相談先があり、定期的に面談してもらえて、必要な場合には職場との調整もしてもらえる。僕にとっては、それだけの価値がある支出です。
仕事を辞めてしまえば、収入そのものがなくなってしまいます。そう考えると、仕事を長く続けるための支援にお金を使うことは、決して無駄ではないと思っています。
支援を受けることは「甘え」ではない
障害者支援について考えるとき、僕が以前から感じていることがあります。
それは、
支援を受けることと、自立していないことは別だ
ということです。
仕事をしていると、
「もう働いているんだから、自分で何とかしなければ」
と思ってしまうかもしれません。
でも、一般企業で働いている人だって、上司や同僚、家族、専門家など、いろいろな人の力を借りながら生活しています。何もかも一人でやっている人なんて、ほとんどいません。
精神障害があるなら、なおさら利用できる支援は利用したほうがいいと思います。むしろ、支援を上手に使いながら仕事を長く続けることのほうが、現実的な「自立」なのではないでしょうか。
「支援を受けているからダメ」
ではなく、
「必要な支援を使いながら働き続けている」
と考えればいい。
僕はそう考えています。
就労定着支援は「仕事を続けるための保険」
僕は就労定着支援を、ある意味で「保険」のようなものだと思っています。
普段は特に問題がなくても、何か困ったことが起きたときに相談できる。
仕事をしていると、いつ何が起こるか分かりません。
体調が悪くなることもあります。
仕事の内容が変わることもあります。
上司が変わることもあります。
人間関係が変わることもあります。
忙しい時期が来ることもあります。
そういう変化があったときに、自分一人で対応しなければならないとなると、かなり大変です。
でも、
「困ったら就労定着支援に相談しよう」
と思えるだけでも、気持ちが違います。
もちろん、すべての問題を解決してくれる魔法のサービスではありません。最終的には自分で判断しなければならないこともあります。それでも、相談できる人がいるというのは心強いものです。
就労移行支援を利用していた人は、一度聞いてみてもいい
もし今、就労移行支援を利用していて、これから就職を考えている人がいるなら、就職後の支援についても聞いておくといいと思います。
「就職した後も、この事業所に相談できますか?」
「就労定着支援は利用できますか?」
と確認しておく。
これだけでも、就職後のイメージが少し持ちやすくなると思います。
僕の場合は、実際に就労移行支援でお世話になった事業所に、そのまま就労定着支援もお願いできました。
就職前から自分のことを知ってくれている人に、就職後も相談できる。
これはかなり心強いです。
就職というのは、ゴールではありません。
むしろ、そこから新しい生活が始まります。
だからこそ、「就職できるか」だけではなく、「就職した後にどうやって働き続けるか」まで考えておくことが大切だと思います。
最後に
就労定着支援という制度は、就労移行支援などと比べると、少し地味な存在かもしれません。
「就職する」という分かりやすい目標があるわけでもありません。しかし、実際に働き始めてみると、就職した後にもいろいろな問題が出てきます。だからこそ、「働き続けるための支援」にも意味があります。
僕自身、就労定着支援を利用してみて、
「これは思っていたより役に立つな」
と感じています。
特に、
職場に直接言いにくいことを伝えてもらえること。
定期的に面談で相談に乗ってもらえること。
この2つは、僕にとってかなり大きなメリットです。
さらに、僕の場合は就労移行支援で利用していた事業所に、そのまま就労定着支援をお願いできました。そのため、就職したからといって、支援者との関係が突然なくなることもありませんでした。
障害者雇用で働くということは、必ずしも一人で頑張ることではありません。
利用できる支援を利用しながら、できるだけ無理なく仕事を続けていく。
それも立派な働き方だと思います。
僕は「仕事を続けること」が何より大切だと思っています。そのために使える制度があるなら、遠慮せずに使えばいい。
就労定着支援は、仕事を続けるための一つの戦略です。
もし今、障害者雇用などで働いていて、
「仕事は続けたい。でも、一人で抱えるのはちょっとしんどい」
と思っているなら、一度、就労定着支援について調べてみることをおすすめします。
支援を使うことは、甘えではありません。
長く働き続けるために、使える制度を上手に使う。
僕はそれでいいと思っています。



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